ヒミツにふれて、ふれさせて。


さっき買った、マフラーのことを思い出す。

せっかく買ったのに、誕生日プレゼントの意味がなくなっていくような気がして、またさらに申し訳なくなった。

値段的にもそんなに変わらないくらいのブレスレット。
とてもとても可愛いけど、どうしてこんなに綺麗なものを、珠理はわたしにくれるのか。

…どうして。



「…これは、俺からのプレゼント。今日の記念ってことで、受け取ってくれる?」

「…っ」



ずるい。

今、そうやって男の人を出すのはずるい。きっと珠理は無意識なんだろうけど、一生懸命だったり必死になっている時に、珠理は急に男の人に戻っていく。

今も、笑っているけど、少しだけ緊張した顔。

わたしが、いらないいらないって、隣で騒いでいたからかな。


「めごが欲しいって言ったから買ったわけじゃないよ。めごが来る前から、これはめごに似合うから付けて欲しいって思ってたんだよ。だから、貰って」

「…っ」


本当に、何から何まで、完璧すぎてずるいよなあ。
デートをした相手にこんなことをされて、嬉しくない女の子なんているのだろうか。


「…ありがと…」


——少なくともわたしは、少しだけ、ものすごく、うれしいと思ってしまった。

申し訳ない気持ちもたくさんあったけれど、それでも、左腕で光っている薄いピンク色の桜貝を見ると、キュッと胸が締まったんだ。



…リョウちゃん以外の男の人から、初めてもらったプレゼント。

男の人からもらった、初めてのアクセサリー。


「ありがとう。大事にするね」


わたしにはあまり縁がないと思ってた。

だけど、あまりにも目の前のこの人が、一生懸命伝えてくるもんだから、素直に、素直に嬉しかったんだ。



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