ヒミツにふれて、ふれさせて。
砂利道を少しだけ降りて、広いところに珠理を引っ張って行く。「なに?」と聞かれたけど、ムシしてやった。さっきのお返しだ、このやろう。
その間も、珠理は2回くらいクシャミをしていたから、わたしはおもむろにリュックからマフラーの入った袋を取り出した。
…かわいい紙袋に入れられているけど。ごめんなさい、開けちゃいます。
「めご?ほんとにどうしたの?」
「…」
ガサゴソと開けて、値札が付いていたところを探す。でも、それはもう店員さんがとってくれたのか、付いていなかった。
ホッとした。なんて心優しい店員さんなんだ。ハサミを持っていなかったから、ちょっと安心。
…ていうか、ほんとわたし、スマートさとかけ離れすぎて、ダサすぎだよ。珠理みたいにはいかないもんだ。
「あっ、あのねっ」
「?」
珠理と、向き合う。
…うまく、顔が見れない。けど、買ったからには、渡したいから。
「あの、誕生日…プレゼントにしてはショボいかもしれないんだけど、その…」
「…」
「…っ、わたし、最近あんたにお世話になりっぱなしだし、色々、話聞いてもらったりというか、むしろ会った時から助けてもらってるからって…ことで…」
「…」
「お礼に、プレゼント買ったんだけど…」
うわあ。緊張する。どうして、渡すだけなのに、こんなに緊張するんだろう。
黒いフワフワのマフラーを両手に乗せて珠理に差し出すけど、その間、珠理の顔を見ることはできなかった。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。なんだろうこれ。別に告白してるわけじゃないのに。くすぐったい。
珠理はどうしてあんなに、サラリとアクセサリーをわたしに渡すことができたんだろう。すごいよ。