ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…あんた、珠理と本当に何かあった?」

「…!」


目を細めて、怪しいものを見るように、わたしに迫ってくる美少女の顔。

「ねぇ、正直に言いなさいよ。あたしの前じゃ誤魔化しはきかないんだからね」

「うっ…」


勘のいい狼のような美少女に迫られて、「何もないです」って言ったらどうなるんだろう。誤魔化せるのだろうか。


「何もないって言ったら…ウソ発見器にかけるわよ」


…いや、誤魔化せるわけがない。勝てるわけがない。勝利なんて見えない。

茶々ちゃんは本当に珠理のことが好きで、中学の頃は珠理と付き合っていた。そして、付き合っていた当時から珠理には忘れられない人がいたってことを知って、静かに別れた。

…そんな過去があるのに。「珠理から好きだって告白されました」って正直に言ったら、どうなるんだろう。こわすぎる。


「…何?遠慮してんの? あんたとあたしの関係で誤魔化しなんて水くさい事するんじゃないわよ」

「っ…」


この美少女には、嘘はつけない。ただのミーハーだったら何とでも言ってやるけど、この子はそうじゃないから。

本気で、珠理のことが好きだったから。
隠すってことは、この子を見下していることになるんじゃないかって、そう思えてきて。

——…本当のことを、話した。





「えっ…!?ってことは、なに!?珠理はずっとあんたのことが好きだったってことになるの…!?」

「うっ…ん…? 分かんないけど…」


この間の土曜日のことを話し終えると、茶々ちゃんは思ったよりも目を見開きながら、コソコソと話して攻め寄ってきた。

…よかった。発狂するかと思ったけど、そうでもないみたい…。一安心。


一方で、膝の上では、小さいお弁当箱を開けようとしている。
…え、もしかしてここでお昼を食べながら聞くっていうスタイル?


「はあ〜〜!?なんなのよ!!あたしはてっきり、もっと美人でスタイルもいい歳上の女かと思ってたわ!!なんで桜井芽瑚なのっ!?拍子抜け!!」

「珠理って案外見る目ないわね!」と、赤いタコさんウィンナーをもぐもぐさせながら、失礼なことを連発する美少女。

わたしもお腹が空いたから、その様子を横目で見ながら瀬名にメッセージを送って、お弁当を持ってきてもらうことにした。


何も食べないで5限受けるとか、無理だから。この際この子も巻き込んで食べちゃおう。


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