ヒミツにふれて、ふれさせて。
…知ってる。もう、知ってる。
“すげーいい奴” なんて、最初から。
でも、きっとわたしより、ずっとずっと一緒にいた近海くんのほうが、珠理のことをよく
知っているんだろうな。
「今、珠理が付けてるブレスレットも、めごちゃんがあげたんでしょ?」
「…えっ!?」
…もう、気づかれてる。目ざといな、近海くん。
「珠理の恋は、さすがに俺も難しいかな〜って、入る隙ないのかな〜って思ってたけど。実はそうでもなかったりする?」
ニヤニヤと、並びのいい白い歯を見せながら笑われる。グッと言葉に詰まるけど、素直にうなずくことも、否定することもできなかった。
「…近海くん、いじわる」
…ほんと、かっこいー顔して、意地悪だ。
「はは、ごめん怒らないでよ。でもさ、珠理の気持ちすげー分かるんだよね。好きな人にすごく好きな人がいるってのは、結構つらいことなんだよ。だから余計、それが実るかもしれないって思うとさー…」
「……つらい、こと?」
リゾットを作ろうとしているのだろうか。お米を水に濡らしながら手を動かす近海くん。
いつも飄々としている彼が、眉毛を下げて笑ってそんなことを言うもんだから、思わず聞いてしまう。
「はは、うん。俺はもうずっと、珠理のことが好きな茶々しか見えてねーから」
「…」
ぴちょん、と、お米が入ったボウルの中に、ひとつぶの水滴が落ちた。
その音が響くくらい、シンとした空間。その中で、近海くんの声が響く。
…初めて聞いた。近海くんの、本当のきもち。
「珠理と茶々が付き合い出してから、茶々の存在を知ったから仕方ねーんだけどさ。別れてからも、シュリシュリ言ってんだもん、まぁ堪えるよね、まいるわ」
「…」
…笑ってる。けど、きっと、本気でそう思っているんだろうな。
「だからさ、好きな人に好きな人がいるのに諦められねーの、すげー分かんの。ムカつくけど、そーいうの見てきてるから、珠理の気持ちは痛いほど分かる。それから、茶々の気持ちもね」
「…」
近海くんは、少し切なそうな顔をわたしに向けて。
わらった。