ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…だから、珠理が今すごく楽しそうにめごちゃんとのことを話すの、聞いてて友達としても、嬉しいというかね」

「…」


好きな人に、好きな人がいるということ。

わたしは、リョウちゃんのことをずっと好きだったけど、そんな辛さは味わったことなんて一度もなかった。

…今だって、一番近い相手の珠理だって、わたしのことを好きだって言ってくれているし。

でも、周りにはこうやって、色んな想いを抱えている人がいたんだ。


「まぁでも、最近茶々はシュリシュリ言わなくなったし、なんか吹っ切れたみたいだし。俺もなんかすごい楽しいんだけどね、今」

「えっ…、そうなの」


…でも、そういえば瀬名も「なんかあった?」ってこの間聞いてた気がするな。茶々ちゃんには、怒られて軽く流されてた気がするけど。もしかして、近海くんが絡んでいたりする…?


「いや〜、なんであんな猛獣みたいな女がいいのかね、俺も。もしかしてドMなのかな」


残った野菜を切りながら、近海くんは困ったように笑った。
わたしも、下準備された野菜をボウルに入れながら、一緒に笑った。





一緒に作業を続けていると、リビングの方からヌッと大きな影が見えた。

手元が暗くなったから、なんだと近海くんと振り返ると、そこには様子を見にきたのか、珠理がいて。


「なにふたりでコソコソやってんのよう」


少しだけ、頰を膨らませてわたしたちの方を見る。


「うわ。見つかった。これ面倒くせーやつだわ」

近海くんが眉間にしわを寄せながら苦笑い。

それを見ていた珠理は、わたしに背後から覆い被さって、自分の顎をわたしの頭頂部に預けてくる。


「めご、近海と何してるのよ〜。アタシを放っといて」


ぐりぐりと、頭にこすりつけられる。
…何してるのはこっちのセリフだよ。何してんだあんたこそ!



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