ヒミツにふれて、ふれさせて。
「じゃあ珠理、食ったらすぐ帰ってこいよ。この後体育だから」
「えっ?!今日体育?!ヤダ〜汗かいちゃうじゃないの〜」
「ヤダ〜〜じゃねぇよ、はよ食え。じゃあな」
ひらひらと手を振って、教室から出て行く陸奥近海。
「体育なんてやってらんないわよ〜」と、ぶつぶつ呟きながら、お弁当を広げる美濃珠理。
その2人が作っていった…というか、引っ掻きまわしていったA組の教室の空気は、今までにないほどシンとしていた。
もう、いいから。「なんでお前らがつるんでんの?」みたいな空気、いらないから。
ていうか、ほんとになんで。
「なんで自然とうちの教室で弁当広げてんのよ…」
「あっ、そうだめご。今日の放課後空いてない?近くのカフェでデートしましょうよ」
「人の話聞いてるぅ?!」
「聞いてるわよ。でもそんなピリピリしてちゃあ、楽しくないわよ。ね、美味しいもの食べに行きましょう、友達でしょ♡」
「…」
…ほんとに、強引にもほどがあるな。
でももう、仕方がない。きっとこの人たちには何を言ってもわたしの声なんて届かないのだ。
きっと、来るなと言ってもこれからしばらくはわたしのところに来るし、こうやって押しかけてお弁当を広げるのだろう。
…あぁ、あの日泣いたこと、今更後悔してきた。
どうしてあの日、この人の前で、わたしは泣いたのだろう。
そんなに、切羽詰まってた?
そんなに、お腹が痛かった?
そんなに、リョウちゃんからされたことが、ショックだった?
…でも、そんなことは今のわたしに聞いてもよく分からないし、きっとあの日のわたしは、こんな変人でもいいから、誰かに頼りたくなったんだな。
そして、今はその尻拭いというか、報いというか、それを受けてみろってことなのだ。
きっと。