ヒミツにふれて、ふれさせて。
「めご、どうしたの。ボーッとして」
心配そうな顔をする瀬名の顔。すぐ近くにいるはずなのに、脳がぼうっとしているのか、遠くにいるような感覚がする。瞬きをするの、忘れてたからかな。
「あ………、ごめん。何でも…」
でも、そう答えている間にも、考えてしまった。
そっか…。
サユリさん…珠理のお母さんは、アメリカにいるんだ。そんなの、全然知らなかった。
でも、どうしてアメリカにいるんだろう。仕事?珠理は連れていけないから、こっちのオジサンの家に置いているとか?だから別々に暮らしてるってこと?
…でも、じゃあ、お父さんは…?
「…っ」
人の家庭事情について、こんなに考え込んでしまうことは、あまり良くないことなんだというのも分かっている。
わたしは珠理とは関係ない。ましてや赤の他人。いくら友達でも、突っ込んでいいことと、悪いことがあるはずだ。
だから、もう、考えるのはナシにしないといけないのに。
「なぁ、そういえば、珠理帰ってくんの遅くない?」
「……!」
ガサガサと、おにぎりが包まれていた紙を丸めながら、近海くんが呟いた。
…確かに、購買はそんなに遠くないはずなのに、時間が経ち過ぎている気はする。
「めごちゃん。ちょっと珠理のこと、見に行ってきてよ」
………。
「はぁ〜!?あんたが行けばいいでしょう、近海!めごにパシらせんじゃないわよ」
「はは、ごめんって。ただちょっと食べすぎて腹痛くて。めごちゃんもう食べ終わってるからいいかなって」
「最低」
茶々ちゃんに怒られている近海くん。
でも、わたしは見逃さなかった。
「…ね? めごちゃん、お願い」
…近海くんが、わたしに向けられた左目を、少しだけ、動かしたこと。