ヒミツにふれて、ふれさせて。





「言うこときかなくていいわよ、めご」と茶々ちゃんには言われたけれど、わたしは近海くんの表情から何かを感じ取ってしまったから、珠理が行くと言っていた購買まで来ていた。

でも、もうお昼休みも終盤。

購買のオバチャンたちもいなくなっていて、そこはガランとしていた。たくさん並んでいたパンやおにぎりも、売り切れたのか撤収されたのか、ひとつも残っていない。


「……珠理…?」


もしかして、入れ違いになってしまったのだろうか。
いつも見ている、大きな背中は見当たらなかった。


「…」


なんだか少し拍子抜けしてしまって、スマホを取り出す。実は珠理の誕生日の日に教えてもらった近海くんの連絡先を開いて、「珠理、いなかったよ」と、打った。



全て打ち終わって、送信しようとした、その時。



「…珠理?」



一階の食事スペースにある、自動販売機の陰に、珠理らしい影が見えた。


大きな手に包まれた、スマホ。それをじっと見ながら、珠理はそこに立っていた。表情はいつもと変わらない、普段の珠理だった。


「………珠理」


ひと声、かける。すると、綺麗な目が重そうな睫毛を持ち上げて、わたしの方を向いた。その瞬間、その目は大きく見開かれる。



「…めごっ!?なんでここに」

「…」


急いでスマホを隠す。それを、わたしは見逃さなかった。

…ていうか、食後のデザートなんて、買ってないじゃないの。何しに行ったのよ、あんたは。


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