ヒミツにふれて、ふれさせて。
「めご、どうしたのぼーっとして」
「…!」
てんこ盛りのメニューをじろじろと眺めながら、美濃珠理は、ポツリと呟いた。
ちらっとわたしを見て、顔色を伺って、そのまままた、視線を下に落とす。
「元気ないじゃない。カレシとまたなんかあった?」
「………………、いや」
美濃珠理の声のトーンが、少し低くなった。こんな声、あまり聞かないから、少し調子を狂ってしまう。
『…静かに泣くのね、アンタって』
そう言われた時、以来だ。
「別に何もないよ。ていうか、早く決めないと遅くなっちゃう」
「わかってるわよう。じゃあ、このフルーツタルトとレアチーズケーキ、めごならどっちが食べたい?」
「…………タルト」
「…わかったわ。すみませーん、注文お願いします〜」
「……」
もしかして、この人なりに、わたしを心配してくれているのだろうか。
元気付けようと、してくれているのだろうか。
わたしが、あの日泣いちゃったりしたから、それからずっと、気にかけてくれているのかもしれない。
「…めごって、」
店員さんの気配がなくなったのを確認してから、美濃珠理はわたしの方をじっと見た。
…長い睫毛がバサバサと揺れている。
「めごって、甘いのニガテなの?ケーキきらいだった?」
コップ貸して、と伸ばされた手に、伏せられていたコップを渡すと、そこに冷え切った水を入れてくれた。
…頼んだカプチーノはホットだったから。その前に口を涼めておくにはちょうどいいな。