ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…べつに嫌いじゃないしむしろ好き。ていうか、数年前からずっと好きなケーキやさんが、ひとつだけあって」
「へえ」
「そこのケーキを超えるところが、見つからないの。だから、なんとなく」
「あら、ここなら、超えるかもしれないじゃない?」
「…前に、一度来たもん」
カラン、と、氷が揺れた。喉が渇いていたのか、水を流し込むと美味しくて、そこから3度ほど飲み込んでしまった。
もう、ほんの少ししかコップには残っていない。…注ぎ足そう。
「そこのケーキ屋さん、どこの?ぜひ知りたいわ」
頬杖をついて、フフフと笑う目の前の男。男女平等がうたわれて、性別に対する差別とか偏見とかも、昔ほどはなくなってきたのではないかとされる現代。
そんな時代だけだけれど、この人が女性的な仕草をしたとしても、自分でもビックリするほどあまり違和感を感じなくなってきてる。
…この人が、ものすごく、女性顔負けなくらい、綺麗な人だからなのかもしれないんだけどさ。
「ねぇ、めご聞いてるの?」
「あっ、うん。この間、アンタとわたしが再会したあたりにある、ケーキ屋さんだよ。鎌倉駅から、少し歩いたところの」
「あ〜〜!あそこね!『ハニーブロッサム』だわ」
「あ。うん、そう、そこ」
…この人も知ってるんだ。まぁ、ケーキとか女子っぽいやつ好きそうだし。あまり驚いたりはしないけどさ。
なんだろう、秘密基地を見つけられてしまった感じがする。