ヒミツにふれて、ふれさせて。



珠理は、わたしの涙を拭いながら、もう少しだけ、お話をしてくれた。



「…だからね。めごが彼氏から暴力を受けているって分かった時は、本当に許せなかった。自分がそういう場面を見て育ってきたから、めごがどんなに苦しんでいるのかって考えたら、堪らなくなっちゃって」

「…うん」

「…俺だったら、もっと大事にするのにって。やさしくするのにって。そんなことばっか、考えてたよ」



——ギュッ、と。

もう一度、珠理の身体に、沈んでいく。

やさしく包まれていた身体は、「離さない」と言わんばかりに抱きしめられて。


…珠理は今、何を考えているんだろうと、思った。




——でも、きっと、さっきまで聞いた長い長いお話が、この、目の前の美濃珠理のすべて。


きっと、今まで珠理が、わたしたちにヒミツにしていたこと。1人で抱え込んできていたもの。

“わたしに、嫌われる” と、思って不安そうにしていた理由のすべてだ。



「……ばかだね、珠理」



どうして、この話を聞いて、わたしが珠理のことを嫌いになると思ったの。

どうして、あんなに不安そうにしていたの。

わたしは、ちっとも、1ミリだって、そんな風には思わないのに。





「めご、今アタシのこと、ばかだって言った?」


言葉を聞いていた珠理が、身体を少しだけ話して、わたしの方を向いた。


「うん、言ったよ」

「…む。なんでよう」


ふに、と、軽くつねられる頰。決して力任せにしないその触れ方に、またきゅっと胸が鳴る。


「…だって、わたし、全然珠理のこと、嫌いになんかなってないんだもん」

「——…めご、」



「きらいになんか、なれないんだよ、珠理」





…珠理、ごめんね。

ずっとずっと、わたしのことを想っていてくれたのに。


わたし、いつもいつも、何も返すことができなくて、ごめんね。




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