ヒミツにふれて、ふれさせて。


「どうして、ハニーブロッサムのケーキが好きになったの?あそこ、なかなか見つけにくいじゃない?」

「あー、確かに。でも、お客さんもたくさんいるし、意外とみんな見つけてるよ。わたしも見つけたし」


『ハニーブロッサム』は、リョウちゃんの家から近いということもあって、中学の頃からよくお邪魔していた。

ケーキ屋さんなんだけど、カフェもあって、お店も駅から離れた自然の中にあって、涼しくて。

毎日たくさんの観光客でにぎわう鎌倉駅とはまったく逆の、とても静かで落ち着くところにポツリと建っているから、すごくすごく、居心地が良かった。


「中学1年生の時に、あのあたりをプラプラ歩いてたら見つけたの。可愛いお店だなあと思って入ったら、ケーキも可愛くて。その時から何回か通って、お店の人とも仲良くなった。オジサンなんだけど、とっても綺麗なケーキを作るのよ」

「うん、知ってるわよ」


…あ、そうか。この人も行ったことあるって言ってたな。なんでわたし、自慢するみたいに言っちゃったんだろう。はずかし。


「それから何度か足を運んで、ある日、試作品だからって、サービスで新作のレアチーズケーキを出してもらったんだよね。それが、もうほんとに美味しくて、ケーキってこんなに美味しかったのって思うくらい、ものすごく美味しくて、ていねいで…」


…はっ、と、息を飲んだ。

おそるおそる顔をあげると、目の前の美濃珠理は、にっこりと微笑んでいる。





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