ヒミツにふれて、ふれさせて。
あまりにも可愛い反応をするから、ぎゃあぎゃあと騒いでいる茶々ちゃんの頭を撫でていると、ガラリと勢い良く教室が開いた。
その音に反射的に顔を向ける。クラスの人たちも少しずつ集まり出していて、その人たちの視線もみんなドアに向かっていた。
…そんな、空気の中で。
「げっ」
と、可愛くない声を出してしまったのは、わたしが茶々ちゃんのような女の子になりきれない理由だと思う。
そこには、黒いマフラーを巻いた長身の男子生徒1人。そしてその隣には、大きなあくびをしている栗色頭の男子生徒が1人。
その黒マフラー長身男と目が合った途端、その顔はパアアと明るくなる。
「……めご〜〜〜っ!!!!」
「うわ」
瀬名ちゃんと茶々ちゃんが、サッと秒速でわたしから離れて行ったのに対して、逃げきれずその巨体に捕まったわたし。
…ああ。朝からなんという暑苦しさ。
「めご、おはよう〜っ!ねぇアンタ、朝のアタシのメッセージ無視したでしょう〜〜!?せっかく付き合った次の日の初めてのおはようメッセージだったのにぃ〜〜!」
ぎゅうう、と、しまる身体。冬の空気で冷たくなった制服が、きゅっと頰にあたる。それが気持ちよくて、わたしの顔は今火照っているんだってことを自覚した。
「…ごめん。だってどうせ学校で会うしいいかなって思ったんだもん…」
それよりも、ここ、教室なんだけど。ほんと、この人のこの欧米のノリどうにかならないかな。
「まぁ!じゃあ学校ではアタシのとこに来る気満々だったってこと? もうほんと、めごってば世界一可愛いわあ〜〜っ♡」
「……」
珠理の、ふわふわした色素の薄い髪が、頰に触れる。くすぐったい。だけど、珠理の匂いがして心地いい。
恥ずかしいけど。