ヒミツにふれて、ふれさせて。


「余計な心配は要らないわよ近海。めごだって結構、珠理のこと好きなんだから」


茶々ちゃんは、ポニーテールを揺らしながら言った。にやにやしている。さっきのを思い出しているのだろうか。やめてほしい。


「ふうん。まぁどっちでもいーんだけど。つーかお前、今日ふたつ結びじゃねーじゃん。どーいう風の吹きまわしだよ?」

「なっ…」


近海くんが、茶々ちゃんの髪が違うことに突っ込んだ。サラサラのその髪を手のひらにおさめながら、にやにやと笑っている。

…近海くん、嬉しそう。ちゃんと結んできてよかったね、茶々ちゃん。



「おし。じゃあ俺らは一旦クラス戻るわ。オラ、そこの浮かれオネェ、戻んぞ」

「ええ〜!? もう行くの〜!?まだめごと一緒にいたいのに〜!」

「ワガママ言うな。次、体育だろ。行くぞ」


バシ、と近海くんに頭を叩かれて、そのままわたしから引き剥がされる。珠理はずっと駄々をこねていたけれど、そのまま容赦なくズルズルと引きずられていった。まったく、迷惑な奴だ。

ヒラヒラと手を振りながら教室を出て行く珠理に、わたしもバイバイと振り返してあげた。



「…なんか、ミノくんのめご好きに拍車がかかってるね」

台風が通り過ぎていった後のような、静かになった教室で、瀬名は笑った。


「拍車がかかるどころじゃないよ…」


これを毎回されるのかと考えただけで、恥ずかしすぎて気が滅入りそうだよ。覚悟はしてたつもりだったんだけど、まだまだ足りなかったみたい。


「仕方ないわよ。今までずっと、見ることしかできなかったんだから。その分、めごが甘やかしてあげれば良い話だわ」

「…」

ふん、と鼻を鳴らして、相変わらず面白そうに人のことを見る女王様。決めた、もし近海くんと付き合う時が来たら、その時は今のセリフと同じセリフを返してあげるんだ。


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