ヒミツにふれて、ふれさせて。
その瞬間に、「きゃ〜〜!」という甲高…くない、男の低い騒ぎ声。違和感ありまくりの浮きまくり。
周りのお客さん、ビックリしてジロジロ見てきてるんですけど!このオネェ野郎!
「ちょっとめご、これ可愛くなぁい?!」
「あー、ウン、カワイイカワイイ」
「ちょっと〜!適当〜〜!」
適当でもなんでもいいよ。ほんっと、大きい声で女の子爆発させるのやめてほしい。この人の取り巻きは、なんであんなに普通に生活できているのか。
すごいな、尊敬するわ。
パシャッ、パシャッ、と、さっきから10回以上はシャッター音が聞こえてる。一体何枚撮る気なのか。
今はやりの、ナンチャラ映えってやつ?
目の前の、大きなお皿にのった小さなタルトをこれでもかってほど写真に収めていた美濃珠理。
わたしは、時間差で運ばれてきたカプチーノに口を寄せる。
…あ、ここのカプチーノは、美味しい。
「…そういえば、めご」
「なに?」
口の中に広がるほんのりとした苦味。目の前にあるタルトが、余計甘ったるく感じる。
「…アンタ、ちょっとは落ち着いたの?」
フルーツがタップリとのったそのタルトに、これまた可愛らしい形をした華奢なフォークを突き刺した美濃珠理。
さっきまで騒いでいた声とは裏腹に、低い、響く声でわたしに聞いた。
「…落ち着いたのって…」
…たぶん、じゃなくて、絶対、リョウちゃんのことだろう。そんなの、想像がつく。
このテンション高々しいオネェが真剣に話すことなんて、そんなもんだ。
「謝ってはくれたよ。今は、別に普通」
連絡がこないスマホは、少しだけ寂しそうだけれど。わたしは、別に。