ヒミツにふれて、ふれさせて。


・・・

放課後、いつも走ってくる珠理がなかなか来ないから、様子を見るためにE組に向かった。ひょこっと顔を出して教室の中を見ると、もう部活動生もいなくなり、残っている人の数も少なくなっていた。

その少ない人たちの中に、栗色頭が1人。…近海くんだ。窓際に座って、スマホを触っている。


「…オーミ、くん」


そっと教室の後ろから入って名前を呼ぶ。すると、すぐに気付いてくれて、「おう!」と彼は笑った。

ほんといつ見ても、さわやかな笑顔。



「どうしたん?まだ珠理、戻ってこない?」


近海くんの近くまで来ると、彼は首を傾げながらそんなことをいう。戻ってこないとは。どこかに行っているのだろうか。


「放課後、まだ見てないんだよね。珠理、どこかに行ってるの?」

「…えっ」


わたしの問いかけに、カッと目を開いて、そのまま半笑いでこっちを見る。…なんだろう、その表情は。
とっさに口を押さえているのを見て、どきっと胸が騒いだ。


「…近海くんー?」

「あぁー…いや、その…。てっきりアイツのことだから、めごちゃんにはちゃんと言ってんのかと…」

「?」


しどろもどろになる近海くんがますます怪しくて、目を細めて彼の顔をじっと見ていると、もう限界だと感じたのか、はぁっと息を吐いてわたしの方を向いた。


「…まぁ、知られちゃったもんは仕方ねーよな」


そして、そんな前置きをされた後。


「…なんか、今日の放課後、呼ばれたんだって」

「呼ばれた?」

「そう。女の子に」

「…」


…オンナノコ。

オンナノコ。珠理が、オンナノコに呼ばれた。


「…それって、もしかしなくても、告白ってこと?」

「さあ、それは分かんないけど。でも今までもそうだったから、そうなんじゃないのかなあ〜。めごちゃんと付き合うようになってたから、なんでか知らないけど、何件か呼び出されてんだよね、アイツ」

「…」


“ オンナノコってよく分かんね〜な〜 ”
なんて、呑気に笑っている近海くん。

でもアナタ今、すごいこと言いましたよね。

珠理って、そんなに頻繁に女の子たちに呼び出されてるの…?


…全然、知らなかったんだけど。


< 296 / 400 >

この作品をシェア

pagetop