ヒミツにふれて、ふれさせて。


いつも通り、やさしく笑いかけてくれる珠理の顔を見て、そんなことを考えていると、また勢いよく教室のドアが開いた。

その音に反応して、反射的に珠理から離れる。

すると、教室の後ろから女の子数人くらいが中に入ってきた。
……少し前に、わたしに色々と詰め寄ってきていた女の子たちだ。


「あっ、ミノとオーミじゃん。おつかれさま〜!」


甲高い声。

…う。隠れたい。こーいう女子、やっぱり苦手なんだよな…。あの時は茶々ちゃんが色々言ってくれたけど。そーいうわけにはいかない時だってある。
何も言い返してこなかった自分を悔やむよ。



「なんだよ、お前らまだ残ってたの」

「いーじゃん。あたしらだって色々と忙しいーんだよ」


トコトコとやってきて、近海くんと同じように窓際に腰掛ける。珠理の陰にいたわたしも見つかって、彼女たちの瞳に映ったのが分かった。

その瞬間に、じろりと見られる。でも、何かを言われることはない。

その代わり、彼女たちの中の1人は、何かを思いついたように珠理の近くまで身体を移動させた。

…覚えてる。わたしが呼び出されていた時に、いつも真っ先に口を開いていた子。たぶん、この人たちの中心人物。

そして、珠理のことが好き。


「あ、そーいえばさあ、ミノ〜」

「なによ?」


甘えた声を出しながら、その綺麗に作られた指先は、珠理のカーディガンをツンと引っ張る。


「さっき、また告白されてたっしょ? 見ちゃった♡」

「…っ!」


その子たちを見るよりも先に、珠理はハッとしたようにわたしの方を向いた。


「ちょっと、やめなさいよ。そーいうこと外部がとやかく言うことじゃないの」


…小声だ。やっぱり珠理は、わたしには知らせないつもりでいたのかな。



< 300 / 400 >

この作品をシェア

pagetop