ヒミツにふれて、ふれさせて。


「でも、ちゃんと断ってるから。めごがいることも伝えてる。めごが心配するようなことは何もないようにしてるつもりだから」

「…うん」


…ぶつかっている珠理のおでこ。冬なのに温かいのは、どうしてかな。男の人って、体温高いのかな。…珠理でも、熱いのかな。


「アンタのこと、狂いそうなくらい、好きなの。大事にしたいって思ってる」

「…うん、ありがとう」

「でも、帰ってきたら近海と2人でいて…またなんかちょっとイラっとしちゃったわ」

「…う。ごめん」


近海くんの言ってた通りだ。でも、ちょっとだけ嬉しく感じているんだから、わたしももう、重症だ。狂ってる。


「話してただけなのに、しかもオーミなのにヤキモチ妬くなんて、情けないとは思ってるのよ、アタシだって…」


はぁ、と、珠理がため息をつく。それと同時に、口元にかかる息が、また熱い。
どうしようもなくなって、顔をしかめている珠理を見るのが、なんだか嬉しくて。少しだけ、にやけてしまいそう。

…でも。でもね、珠理。わたしだって。


「…わたしだって、ちょっとしたことで、モヤっとするよ…」

「えっ?」


さっき、珠理の腕をギュッと掴んでいた、女の子の綺麗なつめ先が脳内を駆け巡る。
それを思い出しただけで、今でもモヤモヤは募って行くよ。


「…女の子…が……」

「…、」

「……ここ、触ってんの、やだった…」

「…!」


…こんなこと、今まで考えたことなんてなかったよ。思ったこともなかったよ。わたしは、そんな気持ち、持つことないのかなと思っていたくらい。

だから、“ やきもち ” とか、まだよく分からなくて。

でも、どうしようもなく強い感情なんだってことは、ちょっとだけ、分かったよ。



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