ヒミツにふれて、ふれさせて。
珠理のカーディガンをキュッと握っていた手を捕えられた。
珠理の手は熱くて、少しだけ熱があるんじゃないかと思ったほど。
「…めご、やきもち妬いたの…?」
「…っ」
「かわいい」
チュ、と、目元でくちびるを鳴らしながら、珠理は笑った。後頭部に添えられた手のひらを滑らせて、やさしく撫でられる。
「…でも、安心して。全部アンタのものだから」
「…全部って…」
「全部よ。アタシの気持ちも、からだも、全部めごのものだから」
「…っ」
珠理の、真剣な顔。吸い込まれそうな瞳。月の光が当たって、白く光る柔らかい髪。そして、囁かれる声。
すべてがやさしくて、きれいで、息をするのも忘れてしまいそうになるくらい。
「…めごのこと、大事にしたい。ずっと宝物みたいに大切に大切にしたい。でも、たまに、すごく壊したくなる時もあるの」
「…っ」
「…でも、それも全部、アタシの気持ち。色んな気持ちが混ざって忙しいけど、全部、めごのこと好きだから。好きで好きで、本当に狂いそうになる」
何度も、何度も、音を立てては降ってくるくちびる。おでこや、目、鼻、頰に触れては、優しく包み込むように髪を撫でられて。
「——…俺が、めごのこと、これだけ好きだって、絶対忘れんなよ」
真剣な顔で、そう、呟かれて。
小さくうなずいたその瞬間に、その整ったくちびるは、潮風で冷たくなったわたしのくちびるを覆った。