ヒミツにふれて、ふれさせて。


そんな、緊張なんてしていること、微塵にも出さなかったのに。本当にこの人、役者すぎる。

「ごめん…。お母さんが突然会いたいっていうからさ…」

「あ、いいのいいの。アタシもお母さんにお会いできたのは嬉しかったのよ。ただ、あの…アタシのこと、知ったらどんな反応されるのかしらとか色々考えて…。だからって嘘で固められた自分は見せたくないし…その…。そしたら色々緊張張り裂けちゃって」

「…珠理…」


珠理も、こわいなあって感じること、あるんだなあ。そりゃそうだよね。本当の自分を曝け出して、嫌われるかもっていうリスクを背負ってたら、なおさら。


「…でも、あぁ言ってもらえてよかった。ホッとした。さすがめごのお母さんだわって思った」

触れられていた手が、ぎゅっと握りしめられた。白い息を吐き出しながらそう話す珠理は、今どんな気持ちなんだろう。



——今日、わたしは珠理のお母さんと初めて会う。



不思議と緊張はしていないけど、少しだけ変な感じ。言葉には表せられないような感情が、ここ最近ずっとわたしを包んでいる。

…珠理は、今、どんな気持ち?



「…今日も可愛いわね、めご。さぁ、行きましょ」

「うん…っ」


珠理と、初めて迎えるクリスマスイブ。

この1日がどんな1日になるのかなんて、わたしはまだ、知らない。



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