ヒミツにふれて、ふれさせて。
珠理がどんなことを話すのかなんて、分からなかった。だって近海くんは、ハッキリと決まったわけではないって言っていたから。
だけど珠理は、倒れていたわたしの身体をそっと起こして、向かい合わせに座った。
「…あの時は、突然ごめんなさい」
そして、また改まって、謝られる。
「…謝らなくて、いーよ」
いいんだよ。だってあの日、珠理はじゅうぶん謝ってくれたよ。守ってくれたよ。心配しなくて良いって、言ってくれたよ。
だから、わたしは…。
「…っ」
…珠理の方が向けずに、ずっと珠理の折り曲げられた膝ばかり見ていたら、それに被さるように何かが置かれた。
「…?」
輪ゴムで止められた、封筒の束のようなもの。
差し出されて、反射的にそれに触れる。
「…これ、は…?」
何枚、重なっているんだろう。それはとてもとても分厚くて。そして、古びたものから、新しいものまでさまざまだ。
…共通点は、そのひとつひとつの封筒に、『しゅーくんへ』と、書かれてあること。
…手紙だ。
「…あの後、叔父さんとも色々話したの。まぁ、あの人があんなの聞いて、黙ってるわけないから、覚悟はしてたんだけどね。そしたら、この手紙を読めって、強く言われて」
「———…」
“ 離れてから何度も送られてきていた手紙も、しゅーくんは読もうともしなかったから ”
…クリスマスの日、オジサンがそう言っていたのを思い出した。珠理と離れてからも、サユリさんは珠理に手紙を送り続けていたって。
ということは、この手紙の山は、これまでにサユリさんが珠理に送り続けてきた、大切なもの。