ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…これ、全部読んだの…?今までの」
ものすごい量だ。中学に入る前から、今に至るまで、何通送られてきていたんだろう。
そして、そのひとつひとつの封が開けられていて、のりが剥がれたところは、まだ新品の時と同じであろう色をしているのが見えた。
…これを珠理は全部、読んだんだ。きっと。
「……めご、最初の3通でいいから、読んでみて」
「え…?」
「ごめん、読んでみて、じゃない。読んで欲しい」
「…」
珠理が、真面目な顔でそう言うものだから、わたしは目の前に置かれた手紙を適当に開いた。
たくさんありすぎて、とても読める量じゃない。
「…」
カサ…と、開いてみる。するとそこには、可愛い花柄の便箋に、小さくて綺麗な字が並んでいるのが見えた。
…それらの手紙は、すべて『しゅーくんへ』から始まっていた。
『しゅーくんへ。
雄介おじさんと、元気にしていますか。
しゅーくんがこれから中学生になろうとしている時に、サユリがこんなことになってしまってごめんなさい。突然1人にしてしまってごめんなさい。そして、これまでもたくさんたくさん傷つけてきて、ごめんなさい。
これからサユリは、しゅーくんとまた一緒に過ごせるように、少しだけしゅーくんと距離を置いてがんばれることを見つけます。
だから、しゅーくん。また、サユリが元気になった時には、いつか一緒に過ごす時間を作ろうね。サユリは少しだけ、前と変わってしまったかもしれないけれど、しゅーくんのことは変わらず愛しています。それだけは変わらないよ。一生変わらない。だから、忘れないで、待っててくれたら嬉しいです。』
『しゅーくんへ。
寒くなってきましたね。9月は、中学の修学旅行に行ってきたみたいだね。京都は楽しかったですか?近海くんと相変わらず仲良しみたいで、安心しています。
サユリも相変わらずですが、しゅーくんと過ごせる日を夢見ながら頑張ってるよ。いつか、修学旅行のことも、しゅーくんの口から直接聴きたいな。
しゅーくん、サユリはしゅーくんのことが、何よりも大切です。愛してるよ。だから、もう少しだけ待っててね。』
『しゅーくんへ。
高校入学おめでとう。入学式も出ることができなくて本当にごめんなさい。近海くんと、目標の高校に入ることができて良かったね。きっと制服も似合っているんだろうな。少しだけ照れていたけど、笑っていたしゅーくんの写真を見て安心しました。いつか、しゅーくんをまた家から送り出せるように、サユリも頑張ります。いつもしゅーくんに励まされているよ。まだまだ少しの間しか会えないけれど、しゅーくんのこと、愛してます。』
『サユリより』