ヒミツにふれて、ふれさせて。
1枚1枚、めくった。3通とは言わず、何通も何通も、目を通した。
綺麗な字。落ち着いている時もあれば、少しだけ殴り書きな時もある。
どんな状況でこの手紙を書いていたのかは分からないけれど、それでも最後は『愛してるよ』の一文で終わっているそれは、サユリさんの愛情がたっぷりと込められた手紙。
「…っ」
めくるたびに、読むたびに、ジンと胸が熱くなって涙が出た。手紙を汚してはいけないと、カーディガンの袖で慌てて拭う。
ただ、珠理を安心させようとして書いただけとは思えないそれは、きっとサユリさんが前向きになるために書いたもの。珠理に会いたくて会いたくて仕方ない気持ちを抑えながら、それでも珠理に想いを伝えたくて書いたもの。
「…素敵な、手紙………」
どんな想いで、書いていたんだろう。サユリさんはどんな想いで、約5年間、珠理と離れて暮らしていたんだろう。
珠理が、サユリさんから受けてきた仕打ちは知っている。ひどいこともされてきたっていうのも、じゅうぶん分かっている。
だけどきっと、愛情なしでこんなの書くことなんて出来ないことも、分かってるから。
「…珠理、良かった。やっと、ちゃんと読めたんだね。頑張ったね…」
「……めご」
次々と溢れてくる。
この涙は、なんの涙だろう。
初めはポタポタと流れていただけの涙も、やがて止まらなくなって、喉も痙攣し出す。
ヒクヒクと動いて止まらなくなっていくそれは、すべてこの手紙のせいなのだろうか。
…それとも。
「———…めご、聞いてほしい」
ねぇ、珠理。この涙は…。
「——俺が、アメリカに行きたいって言ったら、めごはどうする…?」
…きっと、こうなることを、少しだけ分かっていたからかな。