ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…めご…っ」
ぎゅっと、からだが温かいものに包まれる。その瞬間に、広がる落ち着くにおい。鼻水が出て止まらなくても、感じている珠理のにおい。
いつの間にか、だいすきになっていたにおい。
「…ごめん。ごめんね、めご。突然こんなこと…言って……」
「…っ」
「ごめん、大丈夫だから。めごが嫌だって言ったら行かないから。めごより大切なものなんかないから、俺…」
「ちが…」
そうじゃない、と、首を横に振ることしかできなかった。
くるしくて、声も出なかった。
こんなに、心にズキンと痛みが走るとは思わなかった。びっくりした。
…まだまだ、心づもりなんてできていない。珠理からその言葉をもらった時は、笑顔で「行ってらっしゃい」を言いたかったけど、無理そうだ。
「…ごめんねめご。3年から行くことになったら、手続きとか諸々済ませなきゃいけなくて…。早く決断出さなきゃって…」
…うん、そうだよね。分かってるよ珠理。
「ごめんなさい。ごめんなさい。そんなに泣かせることになるとは思わなくて、アタシ…っ、ごめんね…」
頰に、違う温度の涙が伝ってきた。左耳からは、鼻をすする音が聞こえた。
その涙がわたしのものなのか、珠理のものなのかは分からないけど。
かなしいのは、きっと珠理も同じ。
さみしいのは、わたしたち2人、一緒。
ギュッと抱きしめられた腕は、今までのどんな時よりも強くて、息ができないくらいにくるしい。
珠理が、こんなに力があるなんて思わなかった。
そのくらい、強い力だった。