ヒミツにふれて、ふれさせて。
二階には、わたしたち2人しかいないけど、それでも家族に聞こえないように、声を押し殺して泣いた。
でも、他の場所で話せる内容じゃなかったから、ここでよかったと思う。ここが、一番思いっきり泣けた場所だと思う。
「…しゅ、り、珠理…」
「うん?なあに」
「…すき…」
「うん、アタシもだいすき」
「言ってくれて…ありがと………っ」
「っ、なによ〜…、そんなこと言われたら、嬉しくてまた泣けてくる…」
…寒い寒い、冬なのに。
これ以上ないほど抱きしめ合ったからだは熱い。
次々と溢れてくる涙はすぐに冷やされるのに、珠理に触れられているところは冷えることはない。
「……ねぇ、めご」
「…っ、ん、なに…?」
「…今日は、お母さんと弟と、3人だけかしら?」
……え?
「…お父さんは、夕飯には帰ってくる?」
少しだけ離れて、珠理と顔が合わせられるくらいの距離になった時、涙でくっついたわたしの髪の毛をはがしながら、珠理は言った。
「…う、ん…。いつもは、いるけど…」
「ふふ、そっか」
「……、なんで?」
突然、どうしたんだろう。何か、言いたいことでもあったのかな。でも、珠理ってお父さんに会ったことなんかあったっけ。
「…んーん。なんでもない。それより、そろそろお互い泣き止まないと、めごの家族に知られちゃうわね」
「…っ」
くいっと、親指で涙を拭われる。
珠理の目にも、少しだけ涙が溜まっていたから、わたしの指でなぞってあげた。
…珠理が泣いたの、初めて見たかもしれない。
男の人でも、こんな風に泣くことがあるんだ。
「…珠理も、目が真っ赤だね」
「当たり前でしょ。めごのことなんだもん。悲しかったら泣くこともあるわよ」
「…そっか」
…わたしのことになると、珠理も泣くことがあるんだ。