ヒミツにふれて、ふれさせて。


二階には、わたしたち2人しかいないけど、それでも家族に聞こえないように、声を押し殺して泣いた。

でも、他の場所で話せる内容じゃなかったから、ここでよかったと思う。ここが、一番思いっきり泣けた場所だと思う。



「…しゅ、り、珠理…」

「うん?なあに」

「…すき…」

「うん、アタシもだいすき」

「言ってくれて…ありがと………っ」

「っ、なによ〜…、そんなこと言われたら、嬉しくてまた泣けてくる…」



…寒い寒い、冬なのに。

これ以上ないほど抱きしめ合ったからだは熱い。
次々と溢れてくる涙はすぐに冷やされるのに、珠理に触れられているところは冷えることはない。


「……ねぇ、めご」

「…っ、ん、なに…?」

「…今日は、お母さんと弟と、3人だけかしら?」


……え?


「…お父さんは、夕飯には帰ってくる?」


少しだけ離れて、珠理と顔が合わせられるくらいの距離になった時、涙でくっついたわたしの髪の毛をはがしながら、珠理は言った。


「…う、ん…。いつもは、いるけど…」

「ふふ、そっか」

「……、なんで?」


突然、どうしたんだろう。何か、言いたいことでもあったのかな。でも、珠理ってお父さんに会ったことなんかあったっけ。


「…んーん。なんでもない。それより、そろそろお互い泣き止まないと、めごの家族に知られちゃうわね」

「…っ」


くいっと、親指で涙を拭われる。

珠理の目にも、少しだけ涙が溜まっていたから、わたしの指でなぞってあげた。


…珠理が泣いたの、初めて見たかもしれない。

男の人でも、こんな風に泣くことがあるんだ。


「…珠理も、目が真っ赤だね」

「当たり前でしょ。めごのことなんだもん。悲しかったら泣くこともあるわよ」

「…そっか」



…わたしのことになると、珠理も泣くことがあるんだ。



< 357 / 400 >

この作品をシェア

pagetop