ヒミツにふれて、ふれさせて。
下に降りると、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいた。
料理好きのお母さんが、今日は一段と気合を入れて作っている。
そして、リビングのソファには、さっき帰ってきたのであろう、お父さんの影が。
「…お父さん、おかえりなさい」
その背中を叩いて、珠理を紹介する。もう、お母さんと成実からすでに聞いていたらしく、自己紹介をする珠理に「はじめまして」と笑いながら手を差し出していた。
家族も揃って、珠理も一緒にテーブルを囲む。いつものように「いただきます」と手を合わせて、お母さん自慢のロールキャベツを味わった。
「お口には合うかしら。今日はコンソメにしたんだけれど」
「はい…、想像以上に美味しいです」
「きゃ〜!よかった!イケメンにそう言ってもらえると作り甲斐もあるわねぇ」
珠理に褒めてもらえて、上機嫌のお母さん。珠理は少し照れくさそうに、ほくほくのご飯を食べていた。
…家族との、団欒。やっぱりこの空気は楽しくて、大切で、わたしたちにはまだ必要不可欠なもの。
それはきっと、珠理も同じ。
「………、あの」
夕飯の時間も終盤。食べることよりも、話すことが多くなってきた時間に、となりに座っていた珠理は、何かを言いたげに手を挙げた。
「ん?どうしたの、珠理くん」
お母さんからの反応に、珠理は挙げていた手を下ろして、そのまま小さく息を吐いた。
「…?」
突然の行動に、何が始まるのかよく分かっていないわたし。
どうしたんだろう。
「…あの、突然ごめんなさい。この場を借りて、めごの家族のみなさんに、伝えておきたいことがあって」
「……」
…え?
「えっ!?なになに? もしかして、婚約宣言…!?」
「ちょっと母さん、やめなさい」
はしゃぐお母さんをよそに、頭がこんがらがるわたし。
…さっき、お父さんがいるとかいないとか気にしていたけど、まさか、それも関係あったりする?