ヒミツにふれて、ふれさせて。
・・・
珠理が、アメリカに行くことをみんなに告げたのは、渡米を決めた日から1週間後。
自分の気持ちがしっかり固まるまではと、すぐに伝えることはできなかったらしい。
わたしに対しても、あれからたくさん謝ってくれた。初めは絶対にアメリカなんか行かないって言っていたぶん、ものすごく申し訳ないと思っているみたい。
…そんなの、わたしは全然気にしていなかったのに。
「…え? なにそれ?」
お昼休み。お弁当を食べながら、珠理はいつもの調子でその件を告白した。
「だからぁ、春から、アメリカに行くことになったの〜」
なーんて、軽く明るく伝えたのは、きっとしんみりとさせたくなかったから。珠理はそういう人。
なんでもないことのように、まるで毎日の中に溢れていることのように話すから、目の前にならんだ3人は、口を開けたまま唖然としている。
「…アメリカ行くって、お前。本気で言ってんの…?」
第一声を発したのは近海くん。眉間に皺を寄せて、あの日の放課後と同じような表情をしている。
瀬名と茶々ちゃんは、まだ状況についていけてないのか、言葉を発することはなく。
「そっ、もう決めたの。といっても、高校3年の間だけだけどね。大学は日本の大学を受けるつもり」
「は…?」
だから、進路調査表はきちっと行きたい大学の名前を書いて出したんだと、珠理は誇らしげに話していた。
ただ、アメリカの学校は日本と違って9月に入学して、6月頃に卒業らしい。だから、日本の大学の入学式とは微妙にズレることになる。
だけど、今は秋入学の大学もあるらしくて、珠理が前から視野に入れていた大学もそれに対応している。だから、そのあたりを考えながら大学は決定していくって言っていた。