ヒミツにふれて、ふれさせて。
3月から9月までは、生活に慣れるための時間と、英語の勉強をするための時間に充てるって言ってた。
だから、どっちにしろ3月の修了式を終えたら、珠理はそのままアメリカに発つことになる。
「まじで言ってんのかよ…」
「えっ、じゃあ、めごとはその間離れてるってことなんだよね…?そのあたりは、もちろん話し合ったってこと…?」
今まで黙っていた瀬名が口を開ける。ひどく心配したような顔は、きっとわたしたちを想ってのこと。
「うん。珠理とはもう、たくさん話したの。わたしも、珠理はお母さんと一緒にいた方が良いって思ってるから。大丈夫、平気だよ」
「めご…」
それはもう、本当に平気だった。それに、珠理がちゃんと伝えてくれてからの方が、わたしは安心して過ごせている気がする。
今だって、わたしが言ったことに対して珠理は嬉しそうに笑って、頭をやさしく撫でてくれている。
「めごのことは、離れても全力で愛するし大切にするから心配しないで♡」
「…お前の愛で方に距離は関係ねぇってことは分かるけどさ…。はぁ〜〜、まじかよ、そうなるのかなとは思ってたけど、まさか本当にそうとは思ってなかったわ」
長いため息をつきながら、栗色の髪をくしゃりと荒らす近海くん。相変わらず晴れない顔。でも、当然だよね。近海くんは、わたしよりも珠理と一緒にいた時期が長いから。
…口では言わなくても、さみしくなるよね。
「…ま、そういうことだから。とりあえず、高校卒業したら帰ってくる。めごのことも全力を尽くすつもり。でも、置いて行くのは事実だから、それまではめごのこと、よろしくお願いします」
珠理は、わたしの家族に挨拶をしたときと同じように、みんなに向かっても頭を下げていた。
…こんな風に珠理は、自分がいない間にもわたしが寂しい思いをしないようにって、全力を尽くしてくれる。心の底から、ありがたいと思う。