ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…う、うん…?すごく、おいしいよ」
2人に食べているところをじっと見られ、その感覚が不思議になって、わたしも首を傾げる。
そんなわたしを見て、2人はまたお互いに目を合わせていた。
「……ねぇ、めご。聞いていい?」
「ん?」
…なんだろう。改まって。
「めごは本当に、ミノくんがアメリカに行っちゃうこと、ちゃんと受け止められているの?」
フォークを持つ手を止めて、目の前の美味しそうな料理なんかよりも、わたしの方をじっと見つめる2人。
その顔は、お昼休みには見せなかった顔。珠理には見せなかった、わたしを心配してくれている顔。
…あぁ、やっぱり。
今日、この2人は、わたしのためにこの集まりを開いてくれたんだ。本当に、やさしい人たち。
「はは。突然ビックリだよね!クリスマスにお母さんに会わせたいって言われたから会ったんだけどね。まさかそんなことを言われるなんて、わたしも珠理も全然予想していなくって」
笑顔で答える。でもなぜか、2人の顔は見れなかった。ひたすら、目の前のミートドリアを見ながら口を動かす。
「…こんなに急なことが、人生では起きることがあるんだなあって思った。最初はそりゃあビックリしたけど、今は落ち着いてるよ。珠理が一生懸命、わたしがさみしくならないように頑張ってくれてるからね」
「——…」
「家族のことだからさ、仕方ないよね。でもほら、たった1年だし。わたしが大学生になって夏休みを過ごしていたら珠理はまた帰ってくるんだもん。そんなのきっと、あっという間だよ」
……大学生の夏休み。
自分で何気なく言って、後悔した。
まだ高校2年生の冬だ。これから春が来て、3年生になって、合格するかどうかもまだ分からない大学のことを考えて、それから晴れて合格して、入学して夏を迎えて。
そうしないと、珠理は帰ってこない。
思ったより長い。自分で言っておきながら、まったく “ あっという間 ” に思えないことを実感する。