ヒミツにふれて、ふれさせて。
しまったと、思った。あまり考えないようにしていたことを、この一瞬で考えてしまった。
そんなわたしを見抜いてなのか、茶々ちゃんは少し呆れたように、長いため息を漏らす。
「……あんたねぇ、自分で言っておきながら、ものすごくひどい顔してるってこと、自覚してる?」
「……」
顔を上げた。さっきまではあまり見られなかった2人の顔が、目に映る。
手を止めて、心配そうにわたしを見ている。その顔は真面目で、全然ふざけていなくて、まるで今のわたしの本心を探ろうとしているような、顔。
でも、今のわたしたちのぜんぶを受け入れてくれるような、顔。
「ねぇ、めご。もし、ミノくんに言えていない不安があるなら、わたしたちが聞くよ。わたしたちには強がらなくていいから、ちゃんと吐き出した方がいいよ」
「———っ」
力なく、スプーンを握っている右手に、瀬名の左手が触れた。
…あたたかい。
瀬名の手は、いつもこう。あたたかくて、触れられた瞬間に、安心する。
…安心、するから。
きっと、珠理の元へ走っていったあの時だって、瀬名の前では泣けたんだ。
「あんたのことだから、どうせ珠理のことは自分がちゃんとしなきゃとか変なこと考えてんでしょ。言っておくけど、バレバレだから。茶々たちまで気づかないとでも思ってるの?」
「……っ」
—— ぽたり、と。
茶々ちゃんの言葉を合図に、気がついたら右目から出た涙が、テーブルの上に落ちた。
慌てて、それを隠すように、そばに置いていたナプキンで拭いた。
…でも、ダメだった。生まれ出したそれは、次から次へと頰を伝って降りていく。
幸い、一番角の席だったから、ほかのお客さんに見られることはなかった。
だけど、この2人には、もう誤魔化せない。
わたしが、わたし自身の本心に気づくには、充分な量だった。