ヒミツにふれて、ふれさせて。
流れていく涙を拭くわたしを、瀬名と茶々ちゃんはじっと見守ってくれていた。
ギュッと握りしめられた手のひらが暖かくて、また涙が出る。
「……ねぇ、めご」
しばらくして聞こえたソプラノの声に導かれて、わたしは閉じていた目を開いた。
茶々ちゃんの声だ。
「…あんたが、これを聞いて嫌な気持ちになったらごめん。でも、聞いて欲しいから聞いて」
「…?」
繋がれた、わたしと瀬名の手をじっと見つめたまま、茶々ちゃんは口を開いた。
「…あたし、中学の頃、珠理と付き合ってたって話したでしょう。好きになったのは、中学に入学してからすぐ。一目惚れだったの。中身が普通の男の人じゃないってことに気づいてからも、珠理を好きって気持ちが変わることはなかった」
「……ん」
…今まで、あまり聞いたことがなかった茶々ちゃんと珠理の過去。それを、淡々と一点を見つめながら話す茶々ちゃん。
「…好きだから付き合いたいって何度も告白した。だけど、珠理は女の人と遊ぶことはあっても、それを受け入れてくれることはなかったの。…その時にはもう、“ 忘れられない人がいる ” って言ってた。だから付き合えないって何度も振られた」
“ まさかその相手が、あんたとは思わなかったけどね ”
…そう苦笑しながら、茶々ちゃんは続ける。
「だけど、その代わりでも良いって何度も何度も頼んだ。もう告白じゃなくて懇願よね。そしたら珠理はある日、降参したように、“ 両想いじゃなくてもいいなら ” って言って、あたしの彼氏になってくれたの」
「…」
「…でも、いつも考えてるのは、あんたのことだった。毎日毎日、いつも切なそうな顔してたの。だからあたし、聞いたことがあるの。『その子と両想いになれたら、どうしたい?』って」
「…」
「そしたら珠理、なんて言ったと思う?」
…数年前、珠理が茶々ちゃんに伝えたこと。
「『あの子が笑ってくれること、なんでもしてあげたい』って、言ったのよ」
数年前からの、珠理の、変わらない気持ち。