ヒミツにふれて、ふれさせて。
それでも、珠理とバイバイをしなきゃいけない時間は、刻々と迫ってきていた。
珠理はさっきから、時間を先延ばし先延ばしにしてくれていたからか、たくさんお話はできた。たっぷりと時間はあった。
だけど、ずっとそんな時間を過ごしているわけにはいかない。
珠理を、引き止めておくわけにはいかない。
「…あ、最終アナウンス」
空港に響いていく、「保安検査を済ませてください」のアナウンス。それを聞いていた瀬名は、少しだけ寂しそうに呟いた。
…そして、瀬名の言葉を境に、わたしたちの空気も、いつも通りではなくなっていく。
「…ほら、さっさと搭乗口向かえ」
「———…」
トン、と、珠理の胸を押しながら、近海くんは少しだけ冷たく言い放った。だけど、下を向いている。いつも面と向かって文句を言っている近海くんが、今はそうじゃない。
「…しゅーくん、忘れ物はない?」
黙っているわたしたち5人を差し押さえて、オジサンが珠理に近づいた。持っていた荷物を、ひとつだけ珠理に持たせる。
「…これ、買ったものだけど。お腹が空いたら食べなさい」
「…うん、ありがとう。いただきます」
「……」
珠理が、少しだけさみしそうに、笑った。
そんな彼を見て、力強く、一度だけ肩を叩く。
「…そろそろ、挨拶しなさい」
「…」
どきんと、胸が鳴った。足元が、フワフワと浮いたような感覚になる。心臓が早く動いて、身体の端まで、血液が走る。
…変な感じ。身体の全部が、焦っている。
珠理と、すぐに離れなきゃいけないんだぞって、叫んでる。