ヒミツにふれて、ふれさせて。
満足したように笑った珠理は、そのまま、わたしの方に身体を向けた。
…わたしには、今まで散々話してきたから話なんてないのかなって思っていたけど、そこはちゃんとしたいのかな。
やさしい笑顔が、まだちゃんと、目の前にある。
「…めご」
「…っ」
…あぁ、だめだなあ。やっぱり、目の前にきて、わたしだけを見られると、色々と思い出しちゃう。
珠理が話し出した途端、泣いてしまった瀬名や茶々ちゃん、近海くんの気持ちがものすごく分かる。
「…めご、泣かないで」
「泣いてな…」
「笑って」
…そう言えば、「珠理以外の前で泣いたらだめ」なんて約束、したことがあったな。
ここには近海くんもオジサンもいるから、アウトだったのかな。
「…ねぇ、めご」
「…っ、ん…?」
急いで、溢れてくる涙を拭った。
前が見えないのはもったいない。だって、珠理のことをちゃんと見られる、最後のチャンスだから。
「ねぇ、前に、“ 質問は1日3つまで ” っていうルール作ったの、覚えてる?」
視界がしっかりとしてきた時、前を見ると、珠理のきれいな顔が浮かぶ。そして、そんなルール、たしかに作ったなあ、なんて、呑気にそんなことを思い出して。
「…あんまり、守れなかったわよね。めごとの会話が楽しすぎて、もうすっかりそんなの忘れてたわ」
「ふふ…、うん、わたしも」
ものすごく、懐かしいような感覚がするね、と、珠理と笑いあう。
そうだった。珠理がわたしを見つけてくれて、そのあとすぐに作ったルール。あの時を境に、わたしたちの距離はグッと縮まっていったんだ。