ヒミツにふれて、ふれさせて。
「ねぇ、めご」
「うん?」
「出発前に、アタシから3つ、質問してもいいかしら」
伸びてきた手のひらが、わたしの両手をつかんだ。
「え…いまから?なに…?」
「ふふ、じゃあひとつ目ね」
ぎゅっと、握りしめられた手。その手は、少しだけ汗ばんでいて。
わたしのものなのか、珠理のものなのか分からないけど、それに連れられるように、心臓の動きも早くなる。
「…めご、離れても、アタシのことちゃんと、好きでいてくれる?」
「えっ」
「答えて」
…こ、こんなたくさん人がいる中で…っ。しかも、瀬名とかオジサンがいる中で、こんなこと…っ。
「…っ」
だけど、珠理はちゃんと、真剣な顔でわたしの返事を待っているから。
「…う、ん」
恥ずかしいけど、ちゃんと首を縦に振る。
こんなの、2回目は絶対言ってなんかやらないんだから。
「ふふ、ありがとう。じゃあ2つ目ね。めごは、アタシが遠くに行っても、アタシのこと、忘れない?」
「忘れないよ…!!」
「あら。それは即答なのね」
「…っ」
…しまった。反射的に答えてしまった。わたしが、必死なのがバレてしまう。
だけど、それは本当だよ。さっきの質問は恥ずかしかったけど、これは自信をもって言える。みんなの前で、誓ってみせるよ。
「…珠理のこと、絶対に忘れない」
忘れられるわけがないよ。
こんなに、普通の男の人じゃない人を見たのは初めてだったもの。ものすごく、変わった人。
だけど、ものすごくやさしくて、わたしを救ってくれた人。何度も何度も、わたしを暗闇から引き上げてくれた人。
そして、少しずつだけど、心の底から、だいすきになった人。
…そんな人を、忘れられるわけがないんだ。