ヒミツにふれて、ふれさせて。



「…そう。じゃあ、最後の質問」

「…」

「めご、ちゃんと答えてね」



…なんだろう。

そんなことを言われると、緊張してしまうよ。


みんなが、わたしたちを見守る中、珠理は着ていたモスグリーンのピーコートに手のひらを突っ込んでいた。


そして、しばらくした後に、じっともう一度、わたしを見る。




「——…めご」




そして、今までで一番、真剣な顔をして。




「これ、受け取ってくれる?」




手のひらに握りしめてていたものを、開く。





その瞬間に、周りにいた瀬名と茶々ちゃんの声が響く。
近海くんの、驚いた声が聞こえる。


それに気づいた周りの人が、少しずつ、ざわざわと騒ぎ出す。



だけど、それはやがて聞こえなくなっていって、ただ目の前に置かれたそれの輝きだけが、わたしの中に入り込んでくる。




…目の前に出されたもの。


それは、キラキラと輝く、ひとつの指輪。





「これは、予約よ。1年後、アタシが帰ってきて、それからも一緒に過ごして、それでもめごがアタシと生きていきたいって言ってくれた時のための、予約」

「………っ」


「受け取って、くれる?」




…これは、質問なのに。

受け取るかどうかなんて、わたしの答え次第なはずなのに。



「…ん、よかった。ぴったり」



いつのまにか取られていた手に、その輝きは添えられていた。





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