ヒミツにふれて、ふれさせて。
珠理がアメリカに行ってしまってから、1年と4ヶ月ちょっと。
向こうに着いてからは、まず時差ボケに苦しんでいた珠理は、まともに連絡を取り合うことはできなくて。
14時間も時差があるから、生活スタイルなんて合うわけがない。朝、わたしが起きたら向こうは夕方。だから、その間に数分間電話をしたり、メッセージを送ったり。
そして、誕生日とか特別な日には、手紙やプレゼントを送ったり。
そんな毎日を、これまで続けてきた。
あっという間な気もするし、長かったような気もする。
だけどやっぱり、とてつもなく長かったような気もする。
『日本時間の、7月29日の日曜に帰るわね』
そう、珠理に告げられたのは1週間前。
6月に向こうの高校を卒業してから、色々とまた整理をして帰るから、この時期になってしまったと嘆いていた。
急なお知らせに一瞬あたふたしたけれど、そんなのはもう、忘れるくらいサプライズプレゼントだった。
「そっかあ、ようやく会えるのかあ。ミノくん、受験期にはこっち帰ってきてたらしいけど、わたしたちには会いに来なかったもんねぇ」
「…うん。会うとダメになりそうだからやめておくって言ってたもん。まぁ、わたしたちだって必死だったし、そんな時間なかったんだろうけどね」
「そうだねぇ」
…色々とつらかったり、さみしかったりしたことは、今はもう、どうだっていい。
今は、やっと珠理に会えることへの喜びでいっぱいだ。
あと1週間で会うことができるのに、毎日が、1日が、過ぎていくのがものすごく遅く感じるよ。
相変わらず、左手の薬指にはまっている指輪が、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。
あの時は、もらったとこ自体がびっくりで、じっくりとそれを見ることはできなかったけれど、ピンクゴールドのそれには、珠理の誕生石であるブルートパーズが埋まっていた。
…自分の誕生石を恋人の指輪にはめ込むところ、さすが珠理だなあと、呆れながらも少しだけ嬉しく思ったことを、覚えている。