ヒミツにふれて、ふれさせて。
駅前のファミレスだからか、たくさんのお客さんが集まってくる。
わたしたちも、そろそろご飯を頼んだりしようかな。
それにしても、大学生っていうのは楽しいもので、忙しくても、授業が入っていない日にはこうやってみんなと遊べる時間はたっぷりと取れる。
珠理は、結局秋に入学できる制度を使うって行っていた。ちなみに、近海くんと、もしかしたら茶々ちゃんと同じ大学に合格しているらしい。
学部は、それぞれ違うみたいだけど。
東京と、今住んでいる横浜だったら、休みさえあればすぐに会えるし。わたしは瀬名だっているし、珠理も近海くんがいるから、安心だって言ってた。
…とりあえず、この先は高校の時とまではいかないけど、またみんなと楽しい時間がつくっていけるんだ。
「…」
…はやく、会いたいな。
そんなことを思いながら、たくさんの人たちの中、ココア用のカップを持って並んでいると、他の人に身体を押されてしまったのか、視界が動いた。
ホットココア用のカップを持っていたから、それを守るように両手で包むと、そのまま少しだけ、バランスを崩してしまう。
「…ひゃ、」
身体が後ろに反るように倒れて行くのを感じた。
いくら自分がボーッとしていたからって、このままじゃ、しりもちをついてしまう。
痛いのは別に構わないけど、お店のものを壊してしまうのだけは勘弁だ。
人間、危機を感じると一瞬のことがスローモーションに感じるとか聞いたことあるけど、まさにその感覚で。
その一瞬で、色々なことを冷静に考えて、近くに掴まるところがないかどうかを探した。
そして、右手側にあった棚の端を、なんとか掴もうとした。
…その時だった。
頭と心の奥底にしまっていた声が、すぐ近くで響いたのは。