ヒミツにふれて、ふれさせて。
「………おいで」
「…!」
頭がハテナマークで埋め尽くされて、何も分からないうちに、持っていたカップを取り上げられた。
そしてそのまま、たくさんの人たちの中をすり抜けていく。
気がついたら、冷たいクーラーの風が当たるその空間から、真夏の太陽が当たる蒸し暑い空間へと、移動していて。
ファミレス専用の駐車場の陰で、わけも分からないうちに、その大きな身体に包まれる。
「…暑いけど、ごめんね」
「———…っ」
…うそ、本当に…?
本当に、今、目の前にいる人は、珠理なの…?
「………っ、珠理…?」
「そうよ」
「…えっ、えっ? 帰ってきたの…?」
「うん、ただいま♡」
「…え? 1週間後じゃ、なかったの?」
だって珠理は、1週間前に、1週間後の日曜日に帰るって言ってた。
瀬名も、茶々ちゃんも、近海くんも、そうだって言っていたのに。
「…そんなに待てないわよ。めごを驚かしたくって、めごにだけ内緒で、帰ってきたの♡」
「へ……」
「びっくりした?」
「…っ」
——その瞬間、その言葉とともに、懐かしい笑顔が広がった。
少しだけ眉毛を下げて笑う、その癖。
その笑顔に太陽の光が反射して、もう、訳がわからないくらいに、胸がしまる。
忘れていたかのように、身体中に血液が回り出す。
どきどきと、心臓は跳ねて、指の先まで、振動が伝わってくるのが分かる。
…うそ。
本当に、珠理が、帰ってきた。
「…っもう…、せっかく…っ、せっかく会う前にって、美容室予約したのに…」
こんなサプライズを計画していたなんて、全然知らなかったよ。
もう、帰ってきているなんて、気づかなかったよ。
…なんなのよ、ずるいよ…。
珠理のために少しでも可愛くしておこうって、色々と計画立てていたのに。
…もう、そんなのも、意味がなくなるじゃない。
「ごめんね。でも、今のめごも世界一かわいいわよ。髪も伸びたね。大人っぽくなった」
「…っ、う」
…でも、そんなこと、もうどうでもよくなるくらいに、うれしい。
ねぇ、珠理。
やっと会えたね。
突然こんなことになって、「ただいま」なんて言われて、本当にいまだに、訳がわからないけど。
……心の底から、うれしいよ。