ヒミツにふれて、ふれさせて。


次々と溢れてくる涙を、メイクに気を使うのも忘れて拭っていると、


「…めご、かわいい。やっぱり、変わらずだいすき」


ずっと触れたいと願っていた手のひらが、わたしの伸びた髪に触れた。



「…会わないうちに、また可愛くなった。ちゃんと、プレゼントした指輪も付けててくれたのね。アタシのアンタへの気持ちも忘れないで。よく、頑張ったわ」

「…っ、珠理……っ」


よしよし、と、頭にやさしく触れる手のひら。そのまま耳の横に降りてくる癖は、1年半前と何も変わらない。



「ずっと、こうしたかったの。毎日毎日、アンタに触れたくて、仕方なかった」

「…うん……っ、わたしも…」



耳元にあった手のひらは、頰の横を滑っていく。

やさしくつねられる頰。その手首を、わたしもキュッと握り返す。



…だいすきな人の、だいすきな手。

だいすきな匂い、だいすきなぬくもり。



触ってみて、わかる。


こんなに、会いたかったんだって。





「…めご、少しだけでいいから、アンタに触れたい。触れていい…?」


「……うん、」




もう、今はなにも、頭に入ってこないよ。


ただ、あなたが今、目の前にいること。

その瞬間を、どれほど恋い焦がれていたか。






「——…触れて、珠理」






この一言を言える瞬間を、どれだけ待っていたか。









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