ヒミツにふれて、ふれさせて。
リョウちゃんとの約束があまりにも楽しみすぎて、土曜日が来るのはとてもとても、時間が長く感じた。
リョウちゃんから電話が来た日が水曜日。今日はまだ木曜日。昨日電話したはずなのに、おかしいな、1日が過ぎるのが遅すぎる。
夏休みも過ぎて、もう秋の空気が教室を包む。
この間、リョウちゃんと会ったのも、まだまだ暑い夏の日だったのに、夏から秋に変わる日なんて、本当にすぐやって来る。
「桜井さん、桜井さん」
「……ん」
授業も終わって、窓から見える夕日を1人で眺めていたら、日直で残っていたクラスメートの赤松さんに肩を叩かれた。
「ん?なに?」
「ごめんね、あの、廊下でミノくんが待ってて…。桜井さんを呼んでほしいって言われたんだけど…」
……げっ。
昨日今日と、なかなか現れないなと思っていたから、油断していた。
顔を上げると、そこには美濃珠理がいて、大きな手をひらひらと振っている。
わたしが気づいたことで、美濃珠理は入るのを許されると勘違いしているのか、あからさまに嫌な顔をしたはずなのに、笑顔全開でクラスに飛び込んできた。
「め———ご———♡」
「いきなり何?!まじやめて」
「なんでそんなに機嫌悪いのよう。1人で残ってるの見えたから、カワイソウで来ちゃった♡」
「1人じゃない!瀬名の部活終わるの待ってんの!」
つーかカワイソウって何!!!
クラスに突然入ってきて、空いている隣の席にガタンと座る美濃珠理。
昨日はお昼も放課後も、今日も来なかったから、完全に油断してた。もうわたしに構うのなんか飽きたんだと思ってた。本当に油断してた、チクショウ。