ヒミツにふれて、ふれさせて。


「なんなのよ、いきなり来て。オーミくんは?」

「近海?今日は日直の仕事やってるわ。アタシはそれを待ってるだけ」

「じゃあこんなとこにいないでクラス戻って待ってなさいよ…」


なんて、わたしの言葉なんて耳に入りませんとばかりに、隣の席に座ってニコニコとわたしを見る。

なんだこの笑顔は。きもちわるいな。


「めごと同じクラスで、隣の席だったらこんな感じなのかしらね。楽しそう」

「…」


…わたしは、リョウちゃんと隣の席に座ってみたいよ。何バカなこと言ってんだか。


「…早く戻りなよ。オーミくん帰っちゃうよ」

「え〜?また近海?最近めご、近海の名前出すこと多くない?好きなの?」

「なんでそうなんのよ」


あんたの取り巻きなんて、オーミくんしか知らないからでしょうが。
もう突っ込むのもめんどくさいから、なにも言わないけど。


それでも美濃珠理は動こうとしなかったから、ぷいっと顔をそらして、机に顔を預けたまま、再び夕日を眺めた。


「…めご」

「…」

「めーご」

「…」


美濃珠理がわたしを呼ぶ。低い声で。

相変わらず呼び方は女みたいだけれど、それを無視して、ただぼうっと空を見る。


…嬉しいことがあった日は、とてもとてもしあわせだから、わたしはその感情に浸っていたい。

リョウちゃんから素敵な言葉をもらったときは、大切に大切に、その日を振り返りたい。だから、こうやって1人になって、リョウちゃんへの想いにふけっていたかった。

…きもちわるいなって、たまに自分でも思うけれど、こうやってリョウちゃんへの「すき」を確認するのは、わたしにはとても必要なことなんだ。


…それなのに、この男は。


「ねぇ、何ふてくされてんのよう」


わたしの右側に座っていたはずなのに、いつの間にか目の前の席に座り変えて、わたしの方を向いていた。

…声、近いな。



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