ヒミツにふれて、ふれさせて。


「ふてくされてない」

「なに?めご、どうしたの?」

「どうもしないっ」


本当にどうもしないし、ただ疲れて気分的にこうしていたい気持ちなだけ。
そう言うと、「ふーん」と声が聞こえて、それから静かになった。


ふわふわと揺れるカーテン。そこから差す光が、オレンジ色から、茶色へと変わる。
こうやって、太陽が落ちて夜がくるのかと、じっくりと感じさせてくれる。

ゆっくりと時間が過ぎるのを見るほど、落ち着くものはない。



「…めご」


名前を呼ばれた。気がつくと、髪の毛になんだかふわりと違和感があって。

その上から降ってくる低い声に、思わず目を見開く。


「ちょ………」


「あ———っ、なんだよお前、そこにいたのかよ」


わたしの髪に触れていた手をはらいのけようとしたその時、廊下からまた元気な声が聞こえた。

疲れて少し期限の悪い、近海くんだ。


「お前な、めごちゃんとこ行くなら行くって、言えって。まじ探したっつの」


わたしからベリっと剥がして、コンッとゲンコツで美濃珠理の頭を叩く。帰り仕度が住んでいるのか、手にはふたつのカバン。


「…近海、日直終わったの?」

「ああ。もう帰るけど、お前どーすんの?」


近海くんも、大変だな。こいつと腐れ縁なんて。でも不思議と合ってる2人ってのが、不思議で仕方ないよなあ。


「…帰る。めごは?」

「あ、わたしは瀬名待ってるから。お先にどうぞ」

「えー」


なんだよ、「えー」って。一緒に帰る約束なんてしてないだろう、まったく。

わたしの話を聞いて、渋々カバンを近海くんから受け取る美濃珠理。ちゃんと、近海くんと一緒に帰る約束は果たすんだ。こういうところ、ちょっとマジメ。


「あ、そうだ、めごちゃん」


ガタンと机から美濃珠理が起き上がった時、先に歩いていた近海くんが振り返った。


「今度の土曜、珠理と俺と、あと2人の友達と出かけるんだけど。めごちゃん予定空いてたりしない?」

「えっ」


突然のお誘い。しかも近海くんから。




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