ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…あ、ごめん、土曜日はちょっと」
リョウちゃんとの約束以上に、大切なものなんてない。それに、美濃珠理と近海くんだけならまだしも、そのほかに2人もいるなんて、行って落ち着けるわけがない。
「あ、なんか先約あった?」
「…あ、うん、彼氏と…」
「あー!そっか、そりゃ来れないな」
じゃあまた今度だね、と、近海くんは笑ってくれた。そして、ひらひらと横に動く大きな手のひらは、彼の「じゃあね」という声とともに見えなくなった。
それに続いて、美濃珠理も教室を出る。
「…めご」
「ん?」
「じゃあね、また明日」
「うん、じゃあね」
少しだけ落ち着いた声。さっきまでのはしゃぎようとは大違い。
近海くんに怒られたからなのだろうか。というか、あいつは結局何しにきたのだろうか。
わたしを暇潰しに使うのはやめて欲しいのに、しばらくはまた来る時があるかもしれないな。
覚悟しておこう。
「めご〜、お待たせ!部活終わったよう」
美濃珠理と近海くんを見送った後、部活を終えたらしい瀬名は、少し疲れ気味で教室に戻ってきた。
「…おかえり、瀬名」
「ごめんね待たせて〜。帰ろっか」
「うん」
…とりあえず。
早く土曜日がくればいい。わたしは、リョウちゃんに会いたいから。
きっと美濃珠理も、近海くんも、土曜日に予定が入ってるのなら、楽しみにしているに決まっているのだ。