ヒミツにふれて、ふれさせて。
約束の土曜日は、朝早く目が覚めてしまったもんだから、そこから12時を迎えるまでの時間が長く感じて仕方がなかった。
鎌倉駅前でリョウちゃんを待つ。
土曜日だからか、駅は観光客らしき人たちで溢れかえっていた。特にお昼の時間は、駅前もホームもパンパンだ。
12時を少しすぎてしまったけれど、リョウちゃんはまだ来ない。連絡が入るかなと思ったけれど、携帯も鳴らないままだ。
…どうしちゃったんだろう。
よっぽどのことがない限り、リョウちゃんは待ち合わせに遅れたりなんかしないのに。
心配になって、スマホを取り出して、電話をかけた。ワンコール、ツーコールと過ぎていくけれど、それでも出なくて。
「リョウちゃん…」
本当に、どうしちゃったんだろう。
右手に発信中のスマホを握りしめて、周りを見渡してみた。たくさんの人でなかなか見つけられなさそう。
だけど、きっとリョウちゃんなら、来てくれる。そう思いたかった。
12時20分。
少し遅れて、わたしの愛しい人は、目の前に現れた。
「………めご!」
「…!リョウちゃん…!」
大きく肩を揺らしながら、全速力でわたしのもとへ駆けてきてくれたリョウちゃん。ハァハァと息を切らしながら、顔を歪ませている。
「…っはぁ、わりぃ。遅くなった」
「う、ううん、そんなのいいよ。それよりも、走ってきたの?水、お水飲みな」
「ん…」
寝坊、したのかな。そんなに走ってこなくてもよかったのに…。
って、そんなこと言ったら怒られちゃうかな。せっかくこんなに急いで来てくれたのに、こんなこと言うのはやめておこう。