ヒミツにふれて、ふれさせて。
夕日も傾いて、空が群青色に染まる頃、珠理は立ち上がった。わたしの手を取って。
「さ、めご、帰るわよ」
「…うん、そうだね」
「夕飯、食べて帰りましょうか。それとも夕食はお家で食べるかしら?」
取られた手は、キュっと握られて。もう片方の手で、ポンポンと頭に触れられた。
「…ううん、夕食も食べて帰る予定だったから…」
「そっ♡それなら好都合。めご、アタシとデートしましょ」
今はなぜか、この人がいてくれてよかったなって、心から思っている。この人が来てくれなかったら、今もわたしは砂浜で1人、ぽつんと座って途方に暮れていたに違いないから。
…ムカつくけど、今日くらいは、いい奴だって認めてあげてもいい。かな。
「めご、何食べる?少し歩くとイタリアンの美味しいお店があるわよう〜!」
「わたし、しらす丼が食べたい」
「ええ?!また、しらすぅ?!」
わたしも、きっとなんだかんだ、珠理のことは友達として認めていたのかもしれない。
瀬名と同じように、自分のことを話せる友達。
わたしのヒミツを教えても、大丈夫だと言ってくれた人。
「さぁ、あと数時間、楽しむわよ〜!」
それが、わたしにとっての、美濃珠理というオネェなのだ。