ヒミツにふれて、ふれさせて。
お腹の痛みで意識が朦朧としている中、差し出された大きな手に、わたしは思わず甘えてしまった。
腰を支えられて、店を出る。たくさんの人たちに見られて恥ずかしいなと思ったけど、そんなことも忘れてしまうくらい、具合が悪い。
「こっちよ」
コンビニを出た途端、ブワンと熱い空気がわたしたちを包んだ。少し温かくなったことで安心して、ホッと息を吐く。
暑いくらいなのに。今は冷えた冷房の空気よりも、何倍も優しいよ。
「…ごめんなさい。大丈夫なので、行っていいですよ…」
ジワリと、冷や汗ではない汗がにじむくらい、身体が空気に馴染んできた頃に、ハッとした。
今、自分がこの人に助けられていること。
蒼くなっているであろう顔を、首の筋肉だけで持ち上げて、隣にいる大きなやさしい人に声をかける。
その人は、今まで見た人の誰よりも背が高くて、綺麗で自然な茶色の髪が良く似合う男性だった。
「だめよ。このままだとアンタ、また倒れるわよ。助けてくれる人いなかったらどうすんの?この暑さで!」
「…いや、でも…」
「いーから、甘えなさいよ」
「…」
…低い声、な、はずなんだけど。
お腹だけじゃなく、とうとう耳もおかしくなってしまったのだろうか。