ヒミツにふれて、ふれさせて。
「なによ?」
瀬名の丸い目が、わたしを捉えている。あまりにもじっと見るもんだから、咥えていたオレンジジュースのストローを抜いた。
「それで、めごはどう思ってんのかなあって思って」
「はっ?」
…何を言い出すのかと思ったら。わたしがどう思っているか?なにが?何に対して?
「…ちょっと言ってる意味がよく分からない…」
「えっ?!ちょっとショック受けたとか、そういうのはないの?!今まであんなに仲良くしてくれてたイケメンがさあ!元カノいたってことが判明したんだよ?!」
瀬名がガタタッと身を乗り出して、あまりにもものすごい勢いで言うもんだから、クラス中の人の視線が、わたしたちに集まった。
…というか、なんだそんなこと。
「イケメンって。ただのオネェじゃない。しかも仲良くなんてした覚えないし」
「まーたそんなこと言って。なんだかんだ、めごも相手にしてんじゃん」
「…」
相手にしてるわけではない。今日の朝だって、軽く流してきたわけだし。あいつがすることとか言ってくることは大概がうっとーしいことだから、相手にしていたら疲れてしまうに決まってる。
確かにあいつは見た目は学校一イケメンといってもいいのかもしれないけれど、わたしにはリョウちゃんもいるわけで。なんかこう、色々と違うでしょ。
「…めごはさあ、ミノくんが今までたくさん助けてくれて、少しは嬉しいなあとか、そういう想いはなかったわけ?」
「…」
…瀬名は、リョウちゃんとのことを少しだけ知っている。わたしが顔を腫らして来るたびにとても心配してくれるし、きっと今だってそういう気持ちでわたしに聞いてきているに決まってる。
…わたしだって、嫌だ。もし、瀬名がわたしのような事情を抱えていて、周りに助けてくれそうな人がいるのであれば、きっと間違いなくその人を勧めるだろうな。
それは、分かるんだ。わたしも。