ヒミツにふれて、ふれさせて。


だけどやっぱり、わたしとリョウちゃんとのことに関しては、珠理であっても深くは踏み込んできてほしくない。その想いは変わらない。

だからきっと、わたしにとって珠理は、そういうラインの友達でしかないんだ。


「…まぁいいよ、なんだって。元カノに色々と言われるのだって面倒くさいし」

「えー」


…きっと、あの元カノさんは、まだ珠理のことが好きだ。あんな意味のわからないオネェ男子でさえ好きだと言うのだから、相当な珠理のファンなのだろう。

珠理だって、元カノからそう思われるのは嫌なことではないはず。むしろ、未だに一緒に遊びに行ってたりもするんだから、これからだって分からないじゃない。

…もしかしたら、珠理とあの元カノが、やり直すことだって有り得るわけだし。


「…でも、確かにあのオネェに元カノいたのはびっくりしたよ。ちゃんと女の子とデートしたりしてた時期があったんだなって考えたら、あいつも根は男なんだなって思うよね」


「…確かに絵になるよね、あの二人だったら」

「そうそう、あんな広瀬す◯みたいな顔した女の子が横にいるんだよ?ほんと、贅沢なオネェよね、あいつも」


お昼休みに入ったので、持って来たお弁当を広げた。大好きな卵焼きが入っているのが見えて、その瞬間、朝からの憂鬱な気分が少しだけ落ち着く。

鮮やかな黄色をした甘い匂いがするそれを口の中に入れて、もぐ、と口を静かに動かした。

その瞬間に、上から声がかかる。


「桜井さん」


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