ヒミツにふれて、ふれさせて。


名前を呼ばれた方を見ると、クラスメイトの清水くんが立っていた。わたしがこんな性格だからあまり話したことはないけれど、とても優しい人。

…なんの用だろう。


「食べてる時にごめんね。化学のノートを集めちゃおうと思って。桜井さん、今すぐ出せる?」

「…あ…!!」

「めご、まだ出してなかったの?」



そういえば、今日の2限目が化学だった。ノートをまとめたら提出って先生が言っていたのを思い出して、慌てて机の中に手を突っ込む。

すらっと線の細い清水くんは、クラス中から集めた化学のノートを持ち上げて、とても重そうだった。


「これ、お願いします。ていうか、半分持つよ、重いでしょう」


わざわざ提出されていないわたしに声をかけてくれたんだ。この重い壁のようなノートを持って。なんだか、申し訳ない。


「いいよ。桜井さんはお昼食べて」

「…いや、なんか申し訳ないし、理科棟すぐ隣だし行くよ、ごめんね」


あまりクラスメイトと、しかも男子と話すのは得意ではないけれど、清水くん1人で行かせるのに気が引けた。


「…ありがとう。じゃあお願い」


結構、大変だよなあ。こんなにたくさんのノート持つのって…。授業準備係だけは、わたしはなりたくない。

そう思いながら、お弁当に軽く蓋をして、半分のノートを持って教室を出た。




< 67 / 400 >

この作品をシェア

pagetop