ヒミツにふれて、ふれさせて。
化学準備室がある理科棟は、わたしたちの教室からすぐ近くにあった。だから、わたしのお手伝いはあっさり終了。
「ん、じゃあこれで大丈夫だと思う。桜井さん、ありがとう」
「…いえいえ」
清水くんは、わたしの中でも結構話しやすい男子だった。こんな感じでノートを集めて回る係だから、話す機会が定期的にあるっていうのも理由なんだろうけど、本当に気さくで話しやすい人。
だから、廊下で2人でいても、全然平気だった。
「桜井さん」
「ん?」
清水くんの声は軽い。男の子にしては高めで…だから話しやすいのかもしれない。
「あのさ、さっき三河と話してたのって、美濃の話だった?」
「…えっ」
そんな軽い口調で、突然こんなことを聞かれたもんだから、わたしはものすごく驚いてしまった。
…ああ、さっきの聞かれちゃったのか…。
「…あぁ、うん。最近ちょっと美濃くんと話すようになったんだけど…その関係で…」
…元カノがいたって話は、していいものかどうか。いや、聞かれてないかもだし、しない方がいいよね。
「俺、美濃と同じ中学だったから、なんだか懐かしくなっちゃって。あの元カノさんが広瀬す◯似ってのも、すげー分かるし」
ははは、と笑って、清水くんは言った。
…元カノの話、聞かれてた。恥ずかしい。ていうかやっぱり、みんな広瀬す◯ちゃんみたいだって思うんだな。似てるもんな。